『心詠のおばあさん、亡くなりましたよ。』
「…え?」
須崎がずっと介護してきた祖母。
自分がどれだけ苦しくとも、いつも家族のことを先に考えていた姿が過る。
『菊池先生が辞めてからちょうど1年後のことでした。』
「そう、だったのか…」
『菊池先生を失った寂しさが限界に近付いていたときにおばあさんを亡くして…。たぶんそのときに、心詠の心は壊れたんだと思います。』
たった一言の声も出せなかった。
おじいさんを亡くして俺の胸にすがりついて泣いていた姿が、あのときの温もりが今もまだ残っていて。
同じくらい、いやもしかしたらそれ以上つらかったかもしれない。
そのとき傍にいられなかったこと。
ずっと、ひとりにさせてしまったこと。
重なり続ける苦しみに胸が圧迫されそうだった。
「壊れたって…?」
『精神的につらいときに飲む薬に、ずっと頼っていました。』
強く強く握りしめた手のひらに爪が食い込んでいく。
須崎、と心の中でいくら呼んでみても。
そのときの須崎を救うことは、俺にはもうできない。



