『バカだなって。』
「…は?」
ストレート過ぎる表現に思わず声が漏れる。
射るようなその視線に、少しずつ鼓動が騒ぎ始めた。
『そんなに好きなら…ずっと忘れられないなら…なんであのとき手放したんですか?』
「それは、前にも言ったけど」
『あんな綺麗事もういりませんよ。』
語尾が掠れたその声に、もう何も言えなくなる。
綺麗事という一言が、あまりにも深く心に刺さった。
『何も気にせず大切な人と幸せになってくださいって、本当にそう思うなら…俺が今心詠と付き合っていることも祝福してくれるんですよね。』
「え?」
『それを望んでくれてるんですよね。自分じゃない誰かと幸せになっててほしいって。』
そうだと、もちろんだと答えればいいだけなのに。
新田の目に浮かぶ切実さと諦めにも似た絶望感に、感情がぐしゃぐしゃになった。
『俺、心詠と付き合ってます。』
手紙を書いた日のことを思い出す。
もしも今も須崎がひとりでいるのなら。
新田が自分の気持ちを抑えたままでいるのなら。
2人で幸せになってほしいと、本当に俺は思った…?



