しばらく無言で歩いた。
自宅に着いてドアを開けると、新田が遠慮がちに足を踏み入れる。
『…きったな。』
そして立ち尽くしたままそう呟いた。
「掃除は苦手なんや。許せ。」
『俺の許容範囲を超えてます。』
「急に来た方が悪い。」
ソファーに置かれた服やタオルケットを寝室に放り込み、食べたままの弁当の容器をゴミ箱に捨てる。
なんとかソファーとテーブルを空けると新田を手で促して、冷蔵庫からペットボトルのお茶を出した。
「座れや。」
『菊池先生、お風呂は』
「入ってるに決まってるやろ。」
『すいません。失礼します。』
ソファーに座ってまたもそもそとパンを食べ始める新田に笑みがこぼれる。
適当に床に座ると、お互いに会話の糸口を探っていることが分かった。
自宅に2人という状況は、心の距離が近過ぎて全てを見透かされそうだ。
「元気やったか。」
『はい。おかげさまで。』
やっぱり緊張している様子の新田に声をかけると、部屋の空気も少し和らいだ気がした。



