『すいません、歩きながらパン食べてもいいですか?午前中に弁当食べただけなんです。』
「あぁ。」
パン屋の紙袋からいそいそとパンを取り出して食べる新田を見ながら、並んで歩くのは変な感じがするなと思った。
それも大阪で。
『美味いですねこれ。得したなぁ。』
「俺は安くしてもらったことなんかないわ。」
『そうなんですか?菊池先生も顔は格好良いんですけどね。』
「もう先生やない。」
顔はってなんやねんとか、相変わらず自分の顔が格好良いことは認めてるんだなとか、返す言葉はいくらでもあったはずなのに。
無意識に口から出てきたのはそんな一言だった。
『今も先生と呼ばれてるんじゃないんですか?』
「今は"さん"や。指導者ではあるけど、なんや先生はもうしっくりこんくてな。」
子供たちは皆、俺のことを菊池さんとか渉さんとか好きなように呼ぶ。
こんな質問が出るということは、今の仕事についても竹石先生から聞いているのだろう。



