【Wataru Side】


大阪の夏は暑い。

帰ってきてから2度目の夏、照りつける太陽を鬱陶しく思いながら職場へ向かう。


教師を辞めて生まれ育った街へ帰ってくると、ありがたいことに俺が帰ってきたことを知った恩師の紹介ですぐに今の仕事に就けた。


不登校やひきこもりになってしまった子供たちを支援する施設。

学校や社会に馴染めず苦しむ子供たちは、それでも自分なりの方法で前を向いて生活していこうとしている。

勉強を教えたり時には一緒に遊んだり、過酷な家庭環境に身を置く子供たちとも真剣に向き合ってきた。


充実していると思う。

やりがいのある、自分に合った仕事だ。


でも、どこか心に穴があいたような感覚はずっと消えないままだった。



『おい。』

「あ、はい。すいません。」


ぼうっとしていたのか、恩師であり今はここの所長でもある風間(カザマ)さんから声をかけられていることに気付かなかった。