しばらく時間が取れないと心詠に告げて、俺は心詠から距離をとった。

仕事が大変だと思い込んでいる心詠には申し訳なく思いながらも、菊池先生と真正面から向き合おうと誓う。


待ってるからと言った声に心を掴まれた。

離れたくない。

失いたくない。


でも、心詠を失ってしまった菊池先生に、俺は会いに行く。



「大阪へ行こうと思います。」

『え…?』


夏休みを翌日に控えた職員室で竹石先生に告げる。

心配そうな、申し訳なさそうな、複雑な視線と表情から目を逸らさないように話す。



「俺も後悔してるんです。2人をあのまま離れ離れにしてしまったこと。」

『でも、』

「俺は大丈夫です。今度はもう後悔しないように、ちゃんと話してくるので。」

『ごめんね…ありがとう。』


竹石先生から菊池先生の今の職場と電話番号を聞いて、俺は大阪行きの新幹線のチケットを取った。


菊池先生にも、心詠にも、待ってろよと思いながら。