震える手で便箋をめくり、最後の1枚に目を通す。



《新田は元気でしょうか。電話番号を変えて一方的に連絡を断ってしまったことを申し訳なく思っています。》

《新田に伝えてほしいことがあります。》

《最後に重いことを言ってしまって申し訳なかった。もう何も気にせずに、大切な人と幸せになってください。》


とめどなく流れる涙を止めることができない。

菊池先生が最後に俺に言ったこと。

須崎を頼むという、たった一言。


俺の気持ちも知らずにと思っていたけれど、もしかしたらずっと気付いていたのかもしれない。

俺も心詠が好きだということに。


何も気にせずに幸せになってくださいなんて…そんな似合わないセリフを今更ぶつけるなんて。

幸せになるべきなのは…


心詠と幸せになるべきなのは、今までもこれからも、ずっとあなたの方じゃないか。

竹石先生もそう思ったからこそ、俺と心詠のことを察してもこの手紙を俺に見せたはずだ。


封筒の裏側に記された、大阪府から始まる住所。

ここに行けば、菊池先生に会える。


会いに行こうと思った。