ー2週間前ー


『ごめんなさいね、休みの日に呼び出したりして。』

「いえ、大丈夫です。」

『どうしてもゆっくり話したいことがあったの。』


コーヒーを俺のデスクに置いて、竹石先生も隣の椅子に座る。

そして自分のバッグから白い封筒を取り出すと、そっと俺の前に差し出した。

そこには竹石先生の住所と名前が書かれていて、誰かから届いた手紙だと分かる。



「これは?」

『菊池先生から届いたの。』

「え…?」


突然出てきた名前に、束の間思考が停止する。

菊池先生。

最近ようやく考える時間が少なくなっていた名前。



「菊池先生の居場所、ご存知だったんですか?」

『うん。実はずっと手紙のやりとりをしてるの。』

「そうだったんですね…。」


俺がどうしても知ることのできなかった菊池先生の居場所。

竹石先生にも聞いたけれど、あのときは何も知らないとかわされていた。



『隠しててごめんなさい。菊池先生から、新田先生には言わないでほしいって口止めされてたのよ。』


なんでだよ、と思った。

言いたいことも聞きたいことも、こんなにも沢山あるのに。