【Seiha Side】


心詠を家まで送って帰宅した後、そのままソファーに座り込んだ。


心詠が卒業してから付き合い始めて、この家に来ることも多くなっていた。

そのときの幸せが、居心地の良さが、ひとりで過ごす部屋をやけに広く感じさせる。


心詠のバイト先まで迎えに行ったり、ご飯を食べに行ったり、一緒に眠ったり。

そんな何気ない日常を送れることの幸せを、日々かみしめていた。



「はぁ…」


ずっとテーブルの上に放置したままになっているメモを手に取ると、思わず溜め息が漏れた。

たかが数字の羅列。

でも一向にその数字をなぞることができずにいる。


それは、心詠を失うことへのカウントダウンになるから。



竹石先生から話したいことがあると言われたのは、もうそろそろ梅雨に入るかなというじめじめとした季節だった。

何かやらかしたかなと言った俺に大丈夫だよと優しく言ってくれた心詠の声を支えに、俺は竹石先生と休日の職員室で向き合った。