「美味しい。」

『なんかごめんな、綺麗な服着てたのに。』

「全然。こんなの普段着だから大丈夫だよ。」


もくもくと煙があがる焼き肉屋さんで、青波さんが申し訳なさそうに言う。

いつもさりげなく気を配って、誰にでも優しくてスマートで。

こうしてふと青波さんの格好良さに触れるとモテるだろうなと余計なことを考えてしまう。



「青波さんこそジャケット大丈夫?」

『ああ、大丈夫大丈夫。』


綺麗なシャツとジャケット姿は高校時代に毎日のように見てきたけれど、こうして外で会うと新鮮に感じる。

店内にいる女性客がチラチラと青波さんに向ける視線が気になって、向かいに座っていると肩身が狭い。


ラベンダーのサマーニットに白いスキニーパンツ。

綺麗な服だなんて言ってくれたけれど、本当に普段着だ。



『ほれ、肉焼けてるぞ。』

「ありがとう。」

『心詠?』


美味しそうに焼けたお肉を私のお皿に入れながら、青波さんが心配そうな視線を向ける。

私には未だに不思議だった。


どうして青波さんが、こんな私を好きになってくれたのか。