「俺が見てきた須崎はずっと頼りなくて、危なっかしくて、だけどいつも強かった。どんなにつらくても真ん中にはちゃんと芯があって、人の気持ちも大切にできる。」

『そんなこと、』

「あるよ。須崎は本当にいい子だ。」


だから好きになった。

担任として出会ってから2年間。

こんなにもひとりの女性を想い、その気持ちを大事に持ち続けたのは初めてだ。



『本当に嫌じゃないんですか?』

「何が?」

『私にはまだ菊池先生への想いが残っているのに、好きかどうか分からないなんて言っちゃったのに。』

「一緒にいたいんだ。俺が。」


一言ではっきりと告げた俺に、須崎の目の色が変わったことが分かった。

戸惑いや困惑ではなく、ひとつの決意を湛えたような。



『一緒にいたいです。私も。』

「ありがとう。」


そっと手を引き寄せて、もう1度優しく抱きしめる。


絶対に傷つけない。

俺が守り続ける。


腕の中にある確かな温もりを、傍にいると決めてくれた須崎を、ずっと大切にしていく。

そう強く誓った。