【Seiha Side】


受験シーズン真っ只中の校内は慌ただしく、緊張感に満ちている。


笑顔と涙にまみれながら時は過ぎて、すぐに卒業式を迎える。

3年は担任していないが、俺にもやらなければいけないことがあった。


やり残したことが、ひとつだけあった。



「駄目か…」


帰宅してスマホをチェックすると、メッセージが1件届いている。

他校で教師をしている知人からの、分からないという一言に脱力した。


菊池先生の電話番号が変えられていることを知ってから、何とかして連絡を取ろうとしてきた。

電話番号もメールアドレスも変わっていて、メッセージアプリのアカウントは削除されている。

そうなれば連絡を取る手段はなく、教師の知人に1人ずつ当たっていくしかなかった。

可能性が低いとは分かっていながらも、誰も菊池先生の現在を知らないことに広がるのは動揺よりも虚しさだった。


須崎に気遣わせてしまう程、俺は菊池先生がここを去ったことにダメージを受けていたみたいだ。