「菊池先生のこと。もう大丈夫です。」
『須崎…』
「だから無理しないでください。」
菊池先生がいなくなってから、新田先生がどんどん追い詰められていくようで。
何か強い責任を感じているように見えて、ずっと気になっていた。
「菊池先生と連絡が取れなくても私はもう大丈夫です。菊池先生のいない生活を、少しずつ受け入れられてるんだと思います。」
『無理してないか?』
「してません。ちゃんと諦めがつきました。だから先生も、もう気にしないでください。」
眼鏡をかけ直して、ふっと笑みをこぼした表情はやっぱりどこか苦しげだった。
新田先生の中ではまだ何の諦めもついていなくて、菊池先生のいない生活も受け入れられていないのかもしれない。
「ごめんなさい。」
『え?』
「私、自分のことしか考えてなくて…。先生には先生の想いがあるのに。」
『須崎が謝ることじゃないよ。俺の想いも、もうなかったことにしていいのかもな。』
それは新田先生にしか分からない気持ちだったけれど、ひとりで抱えてきたのであろう無念さが伝わってきた。