【Koyomi Side】


祖父が亡くなって、それからすぐに祖母の施設が見つかった。

私の生活は、少しずつだけど確実に変化していく。


どんな日常にも慣れてしまう。

悲しくても、虚しくても、同じ毎日が続けばそれが私の生活になる。


だけど埋まらない心の穴がある。

動かない時間がある。


そして、変わらない気持ちがある。


菊池先生がいなくなって、2ヶ月が過ぎた。



『須崎さん。』


声をかけられたのは突然で、久しぶりに聞く声に自然と足が止まっていた。



「桜木先輩。」

『…久しぶりだね。』

「はい。」

『ちょっといいかな。』


こうして話すのは、桜木先輩から付き合ってほしいと言われたあの日以来だった。

なぜ声をかけられたのか分からずに緊張する私より先輩の方が緊張しているみたいで、空気が張りつめていく。



『ごめんね、急に声かけたりなんかして。』

「いえ、大丈夫です。」

『謝りたいことがあるんだ。』


放課後の静かな廊下。

先輩の声が、私にだけ届く大きさで響く。