俺が見てきた菊池先生と須崎の姿を何度も思い返している。


須崎を心配する竹石先生と俺に、1人の生徒に肩入れするのは良くないと冷たく言い放った菊池先生。

空手部の元部室で過ごしていた2人。

須崎に何したと聞いたときの、菊池先生の表情。


俺が知らないところで、知らない間に、2人は確実に距離を詰めて想いを通わせていた。



『菊池先生がいないと職員室が広く感じるわね。』


じっと菊池先生の席を見つめていると、隣の席で竹石先生が静かに呟いた。



『須崎さんと一緒にいたのが私だったらきっと何も言われなかっただろうけど…』

「そうですね。」

『菊池先生ってただでさえちょっと見た目が怖いし、女子生徒と学校外で2人ってのは不思議な光景だったのかもね。』


俺だったら、と考える。

もしも須崎と一緒にいたのが俺だったら、菊池先生のように疑われていただろうか。


…疑われてただろうな。


俺が須崎に対して抱いていた想いは、おそらく菊池先生と同じだ。