『あ…ごめんなさい。』

「いや。」


足音に振り返った生徒が驚いたように立ち上がった。

手には弁当が入るサイズの小さなカバンが握られているが、食べていた様子はない。



「えっと…。」

『2年2組の須崎です。』

「あぁ。」


ここ最近竹石先生と新田からよく聞く名前だった。

気をつけて見ていてとかなんとか。

事情はよく知らないが、この子のことだったのか。



「こんなとこで何してる。」

『すみません。お弁当…家にあるの適当に掴んできたらカップスープで…お湯、なくて。』


どうも俺は普通に聞いたつもりが全部怒ったように聞こえるらしく、須崎は少し後ずさったけれど逃げられはしなかった。

少し前に職員室にカップ麺のお湯を貰いに来た生徒を怒って追い出したことを思い出す。

ただ今自分がぶら下げているコンビニ袋の中に入っているのもカップ麺で、なんとなくここならいいかと思った。