先輩と話して自分の気持ちを認めてから、私はひとりで過ごす時間ばかりになった。
2人のときなら少しは気持ちを表してもいいかと思っていた。
でもそれはあまりにも危険なことなんだ。
『心詠、今どこにいる?』
母から切羽詰まった声で電話がかかってきたのは、下校途中にバス停まで歩いているときだった。
「バス停だけど、どうしたの?」
『おじいちゃんの病院まで、蒼(ソウ)と一緒に来られる?』
「えっ?」
『病院前までバスがあるから。』
何の前置きもなくそう言った母の落ち着いた声に、なぜか一気に鼓動が速まった。
これまでお見舞いへ一緒に行くことはあっても、病院に呼ばれたことはない。
それも弟の蒼も一緒になんて…。
急速に高まる不安に頭が真っ白になる。
どうしよう、どうしよう。
しっかりしなきゃいけないのに、鼓動が速まるばかりで何も考えられない。
気付いたら、勝手に手が動いていた。
『もしもし。』
「菊池先生…」
『須崎か?どうした?』
電話の向こうから聞こえる菊池先生の声に安心して、一気に涙が溢れた。



