『聞いたよ。介護してるんだってね。』
「だったら…」
『でもさ、高校生にできることなんてたかがしれてるだろ。勉強の時間くらい取れるはずだけどな。』
落ち着け。落ち着くんだ。
こんな、ちゃんと知ろうともしない奴のことなんかもう放っておこう。
何も考えるな。
『まったく、新田先生の生徒はすぐにそうやって新田先生の気を惹こうとする。』
ガタン、と音を立てて立ち上がった俺に視線が集まる。
俺には自分の糸が切れる音が聞こえていた。
「なんやねんさっきから。もう少し理解してあげようとか思わへんのか!」
『ちょっと菊池先生。どうしたんですか急に。』
先輩である原先生に突然噛みついた俺を同僚がなだめる。
原先生は驚いているのか何も言わずにただ俺を見上げている。
なんでそんな言われ方をしなきゃいけない。
須崎の何を知ってる。
高校生にできる"たかがしれてる"を超えたことをしているから、須崎はあれだけ疲弊しているというのに。