『菊池先生にはちゃんと言いたかったの。何でも言えって言ってくれたから、つらくなったら電話しようって思ってました。』
「あぁ。」
『本当につらくなったら…本当に本当にもうダメだって思ったときに電話しようって。』
電話はかかってこなかった。
それは須崎が少しのつらさを我慢し、それを積み重ねてきたということで。
積もりに積もった苦しみを、今も抱えているような気がした。
「そこまで我慢せんでも…」
『菊池先生がいてくれるって思えば、頑張れたから。』
「須崎…。」
ぎゅっと抱きつく須崎の頭にそっと手を置いて、新田から聞いた言葉を思い返す。
おじさんもおばさんも何もしてくれない。
助けを求められても応えない大人ばかりの環境で、何でも言えという言葉を信じられなくなってしまった須崎。
積み重なった苦しみが、新田の前で溢れてしまったのだろう。
『私、新田先生にひどいこと言っちゃった。原先生の前から逃がしてくれたのに…助けてくれたのに…』
その前に俺に電話をしていれば良かったという最初の言葉に、ようやく繋がった。



