『じゃあ、これからもたまに寄りますね。』

「なんでだよ。」

『まぁいいじゃないっすか。あ、須崎さーん。』


爽やかな笑顔を振りまいて桜木は立ち去った。

奥のドアから廊下へ出て行く須崎を追って。

須崎は桜木に小さく頭を下げて何か話していたが、立ち止まることはなく2人並んで歩いて行った。


その背中をなんとなく見つめる。

これからも寄るって、そういうことか。


須崎にも年並みの一面があることに安堵しつつ、なぜか少しだけ面白くないと思った感情に気付かないふりをして教室を出た。


結局、須崎のことをちゃんと知ろうとしなかったのは俺なのだろうと思う。

竹石先生の思いを受け止めているつもりで、助けを求めていないのだから放っておけばいいという菊池先生の言葉にもどこかで共感していた。


このとき面白くないと思った感情にもっと目を向けていれば。

須崎のことを、誰よりも早く助けてあげることができたかもしれないのに。