保健室のベッドで須崎を横にさせると、一気に疲労と眠気が来たのかそのまま眠りに落ちていった。

その場を離れようとしたとき、須崎の手に薬が握りしめられたままになっていることに気付いてそっと手をほどく。



『新田。』


手に触れた瞬間にドアが開いて、慌てて薬を握りしめる。

返したつもりが、また俺の元に戻ってきてしまった。



『里谷先生、近くまで来てるからもう着くて。』

「そうですか。」

『須崎は?』


その問いになぜかうまく答えられなくて、視線だけを須崎に向ける。

俺も菊池先生も、しばらく何も言わなかった。


手の中にある薬を強く握りすぎて爪が食い込む。

痛みは感じなかった。

須崎の言葉が刺さったときの痛みが深すぎるのかもしれない。


おじさんだっておばさんだって何もしてくれない。

ご飯を食べさせて。おむつを買って来て。


大変だろうなと漠然と思っていた俺が初めて聞いた生々しい言葉は、想像以上にショックで、衝撃的だった。