2年2組は、ちょっとうるさいけれどとくに問題のある生徒もいない扱いやすいクラスだった。

担任になって1週間以上経つと、だいたい生徒たちの関係性も分かってくる。

なぜ高校生というのはこうもきっちりとグループを作って馴れ合うのだろうと不思議に思いながら、そのどこにも属している様子のない須崎のことも不思議だった。



『新田先生~。』

「おう、桜木。」


放課後のクラスに、3年の桜木 央太(サクラギ オウタ)が顔を出した。

去年俺が担任していた生徒で、今年から空手部の主将になった爽やで明るい奴だ。



「こんなとこで何やってんだよ。これから部活だろ?」

『先生の顔見に来たんすよ。』

「気持ち悪いこと言うな。」

『嘘だって。ちょっと寄っただけです。遅れると菊池先生マジ怖いから。』


菊池先生は確かに鬼だけど、その指導のおかげで空手部はこの辺では有名な強豪校になっている。

その部で主将を任されるのだから、桜木は優秀な部員なのだろう。