城からわざわざ迎えの馬車を出してくれたイオ様


その馬車は正門をくぐり、城の前で止まるのかと思えば、方向を変えて城の左手奥に進み続けた。



どんどん奥の方へと進んでいく馬車の窓から外を見れば、私も見たことない場所に来ていた。




緑が多くなった風景を眺めていれば、不意に馬車は止まり、静かに馬車のドアが開けられた。





「!イオ様!!」

「道中何もなかったか?」

「はい!馬車を出してくださりありがとうございました。」



馬車の中でお辞儀をしようとした私を遮るようにイオ様は手を伸ばした。


その意味は分かるのだけど、…取っていいものか一瞬悩んだ。



恐る恐る手を重ねれば、優しく馬車から降ろしてくれる。





そしてその手は離されることなく、イオ様に握られたまま何処かへ歩き始めた。


手、離さないのかな…とそればっかりが気になる私にイオ様はいつものように話しかけてくれた。