「 太陽くんはそれで幸せなの? 」




すらりと伸びた足を組んで机に肘をついた彼女は秋色に染る窓の外を眺めながらふとそう聞いた。




赤く紅く朱く色づく夕日に当てられた艶のある長い髪が、薄く空いた窓から入る風に吹かれてなびく。




俺は椅子の背もたれに腕をまいて少しためてから答えた。




「 …幸せだよ、あいつが幸せなら 」





そう…と彼女は零すように返事をする。





「 私は… 」





そこまで言いかけて彼女は誰かを見つけたようで窓の外に向けて少し口角を上げ、ゆるゆると手を振った。





そのままガタッと音を立てて椅子から立ち上がる。




「 終わった? 」





机にかけたカバンを肩に下げて彼女は巻き込んだ髪をするりと解して頷く。





そしてこっちを真っ直ぐに見て言う。





「 私も幸せだよ。雛が幸せなら。 」





それはきっと、さっき言いかけた言葉とは違うだろう。





だけどそれでいいんだ。





それが俺たちの関係を繋ぐものだから。





「 そっか。じゃあ俺もそろそろ龍のこと迎えに行くかあ。 」





よっと椅子から立ち上がりカバンを肩から後ろに掛けて持つ。




前を歩いて教室を出る世奈を小走りで追いかけてその手を掴み引く。




引っ張られたまま倒れ込んでくる世奈を支えて




「ん…」




ちゅっと軽いリップ音を立ててキスをした。




そのままゆっくりと離れてお互いが反対の廊下を歩く。




「 じゃあな。 」




「 ばいばい、また明日。 」





…2人のキスは淡々とした作業のようで甘さはなかった。