それを裕香は聞いてきた。

滴はまだ幹部のだれにも涙のことを話してはいな

いし、もちろん裕香にも。

だから裕香の質問に滴は曖昧な笑みを浮かべた。

「しーくん?」

裕香が悲しそうに滴の顔を覗き込んでくる。

幹部の皆も。

「滴さ、いい加減話してよ。」

乃愛が言った。

「そうですよ、仲間ですよね」

そう言ったのは真幸だった。

晴臣は頷いて、夕輝は何も言わないが真剣に

滴を見つめている。

だけど滴は小さく苦笑して首を横に振った。

「これは俺だけの問題じゃないんだよ。」

「え?」

裕香が聞き返す。

「裕香はここに居ることに、ちゃんと覚悟があ

るけど、あいつはそうじゃない。俺たちに巻き込

んでいいほど強くない。」

そう言う滴に部屋はシンッと静まり返った。

そんな中、いち早く我を取り戻したのは真幸。

「あいつって?」

「ん?」

「あいつって誰?」

「俺の大切な子。俺の半身であり、片割れであり

唯一な子。」

「それってどういうことだよ。」

そう言ったのは晴臣だった。

「裕香が居るのに、お前は他に大切な奴が居るの

かよ!」

裕香は泣きそうなになって俯いている。

「そうじゃない。裕香のことは女として。でも

あいつにはそうじゃない。」

「それってどういうこと?」