「ちなみに、隣の席の人は何に出るの?」



隣の席の人……つまり斎宮くん。



どうやら唯奈ちゃんは名前を覚える気がないらしい。

何度教えても、すぐ忘れているので、私は諦めました。



「残り物でいいとか言ってたけど……結局なにに出るんだろう?自分のことに精一杯で、斎宮くんが何に出るのか見てなかったよ」


「ま、あの見た目じゃ運動出来なさそうだし、借り物競争かもよ」



……あの見た目ならね。



素顔を見た感じだと、何でもできるパーフェクトマンに見えるけど……。

それもこれも、イケメン効果ってやつかな?



「明日にでも聞いてみようかな。最近は割と、喋るようになってくれたし」


「へえ、なんで?」


「なんでって、そりゃ……」



あっ、あぶな……!

もうちょっとでうっかり喋っちゃうとこだった。



これじゃあせっかく斎宮くんと友達になれたのに、台無しになるところだった。



途中で言葉を詰まらせた私を、唯奈ちゃんは不思議そうに見つめる。



「な、なんでだろうね?きっと私の想いが通じたんだよ、あはは」


「……楓音。嘘つくなら、もうちょっとバレないようにつきなよ」



哀れな目線を送られ、「すみません……」と呟いておいた。



唯奈ちゃんは優しいから、何かを察してか、それ以上追及してこなかった。

…それとも、ただ単に興味がなかっただけか。