―――帰り道。
今日の帰りは珍しく唯奈ちゃんと一緒だった。
「部活が休みだなんて珍しいね?」
「そうね。たまには休みも必要って気づいたんじゃない?」
ちなみに唯奈ちゃんは運動が得意なので、陸上部に所属している。
本人は体型維持のために、部活に入ったって言ってた。
「私は唯奈ちゃんと久しぶりに一緒に帰れて嬉しいな」
「確かに、楓音と一緒に帰るのって久しぶりかもね」
クスッと口元に笑みを作る唯奈ちゃんに、私の胸はキュンと恋の音を奏でる。
他愛のない会話をしていたかと思うと、やっぱり話題はあの話になる。
「そういえば、体育祭に出る種目決まった?」
唯奈ちゃんは運動得意だし、何に出ても活躍しそうだ。
「うん、リレーと棒取りだったかな」
「えっ!二つも出るんだ!すごい、さすが唯奈ちゃん」
「私は面倒だし、どれにも出たくなかったんだけどね。クラスの子にどうしてもって頼まれて」
おお……私とは正反対だ……。
顔面も素晴らしくて、頭もよくて、運動も出来るなんて。
神様は唯奈ちゃんに二物を与え過ぎたよ。
「楓音は?そっちも決まったんでしょ?」
「うん、まあ。私は運動苦手なので……」
「それは知ってる」
「……だよね。だから私は、借り物競争に出ることになりました」
「へえ、借り物競争かいいじゃん」
と、唯奈ちゃんは明るい顔をする。
「結構盛り上がるって聞いたし、楽しそうじゃん」
「うん!私でも頑張れば勝てるかもしれないし、精一杯やってみるよ!」
借り物競争は所謂、運動が苦手な子が出る種目であって、勝利しても点数は低い。
が、観客に楽しんでもらうイベントのようなものなので、それなりに盛り上がるらしい。