そんなところに、私を呼ぶ美しい声が聞こえる。



「楓音」


「この声は……あっ、唯奈ちゃん!」



今日もハイクオリティフェイスの唯奈ちゃん。



いつの間にか、私のクラスへと来ていた。



相変らず、お美しい顔面をしてる……。

今日も唯奈ちゃんの美しさに乾杯だ。



「二組の教室に来るなんて珍しいね?どうかしたの?」


「次の授業で使う辞書を忘れちゃってさ、楓音持ってない?」


「あっ、私持ってるよ!ちょっと待っててね」



えーっと、確か後ろのロッカーにしまってあったはず……。

どこだ、どこだ~。

あっ、あったあった!よかった。



辞書を片手に振り返ると唯奈ちゃんは、二組の教室内へと視線を飛ばしていた。



誰か探してる……?

にしても、お顔がちょっと怖いような。



「唯奈ちゃん?どうかした?」


「……いや。楓音をイジメた女たちは、大人しくしてるかな~って」


「ひえっ!ゆ、唯奈ちゃん、お口が悪くなってるよ……!」



もしかして、昔の血が騒ぎだしたってやつですか……?



こうみえて唯奈ちゃんは、中学の頃、少々荒れておりまして。

実は、元ヤンなのです。



本人曰く、反抗期の延長線上だったらしいけど、あの時の唯奈ちゃんは誰がどうみてもヤ●キーでしたよ。(小声)



「唯奈ちゃんのおかげで、あれから何にもされてないし大丈夫だよ!ほんと、迷惑かけちゃってごめんね」



あのトイレでの事件があった後、どこからか唯奈ちゃんの耳にも入ったらしく、私のことを物凄く心配してくれたのだ。



唯奈ちゃんはとっても優しい女の子だから、トイレの件を聞いて、どうやらプッツンしちゃったらしく……。

私の代わりに真山さんたちに軽く話をつけてくれたらしい。