まるで自分の気持ちから逃げるように。

斎宮くんから逃げてしまうように。



背を向け、この場を立ち去ろうとした。



「……えっ。ど、どうしたの……斎宮、くん……」



そんな言葉が零れたわけは、突然腕を掴まれたからだ。



なにも言わず、ただギュッと私の腕を掴んで離さなかった。

まるで行くなとでも引き止めるように。



「どうした斎宮?楓音が困ってるんだけど」


「……まだ彼女とは、話しが終わってないんで」



えっ…斎宮くん……?



「きゃっ…!ちょ、斎宮くん……!?」



すると次の瞬間、斎宮くんは私の腕を掴んだまま走りだしていたのだ。



なっ、なに……!?

どういうこと……!?



状況を理解していない私を引っ張って、保健室を飛び出していく。



きゅ、急にどうしたの……!?

…なんでっ、こんなことするの……?



今すぐこの手を振りほどいて、保健室に戻らないといけないのに。



太陽くんのところへ行かなくちゃいけないのに。



……振りほどけないよ。

このまま、ずっと一緒にいたいんだもん……。