隣の席では、腕を枕にして、顔を窓側に向け斎宮くんが眠っている。



斎宮くんって、基本的に本を読んでるか寝てるかの二択だよね。

マイペースな性格なのかな?ちょっと羨ましい。



……そういえば、私は全然知らなかったんだけど、前みたいなことはよくあったみたい。



あのあとクラスの男の子が教えてくれたのだ。



どうやら斎宮くんはその……女の子たちからいいように使われていたらしくて……。

前みたいに日直の仕事を押し付けられることも、あれが初めてじゃないらしい。



……斎宮くんは気が弱そうだし、断れない性格をしてるのかなぁ。



私が言えた義理じゃないけど、いつも一人だし、友達とかいないのかな。



……だったら尚更、私が守ってあげないと!

同じぼっち仲間として、隣の席同士として、困ってたら助け合わないとね。



こんなことを言ってるけど、本当はただの私のエゴなのかもしれない、と時々思う。



奥底に閉じ込めていた気持ちが、少しだけ零れる。



……独りぼっちで、どうすることも出来なかった私。

……誰かの陰に隠れて、泣くことしか出来なかった、惨めな過去。



そんな昔の自分と斎宮くんを重ねて見ていたのかもしれない。



忘れてしまいたい記憶が、少しだけ頭を過った。



っ、……たとえ、もしそうだとしても、いまの私は違う。



昔の自分とは決別したんだ……!

私は強くなるって誓ったんだもん。



だから、自分の信じた道を進もう。

大丈夫……私は出来る子、やれる子……大丈夫。



過去は振り返らず、前だけ見ていればなんとかなる!



……いまは深く考えないで、ゆっくりと前に進んでいこう。