「太陽くん……?どうかしたの?」


「あのさ、楓音。……俺、見ちゃったんだよね」



見ちゃった……?



その言葉に何故かとても嫌な感じを覚えた。



太陽くんはゆっくりドアを閉めると、重い足取りで私の席まで来る。

閉ざされた教室は、私たちだけの二人の空間になる。



気まずそうな顔を浮かべる太陽くんに、再び問いかける。



「あ、あの…見ちゃったって、なにを……?」


「……お昼休み、楓音さ保健室にいたよね…?」



ギクッ。



心臓が飛び上がると同時に、肩を震わせた。



なっ、なんで……それを太陽くんが……。



保健室にいたのはもちろん事実で、それを太陽くんが何故か知っていて。

否定の言葉も、誤魔化しの言葉も、頭の中が真っ白になってしまい、何も浮かんでこなかった。



そして、なにも言わない私の返事を『YES』と捉えた太陽くんは続ける。



「……お昼休みに、偶然保健室の前通りかかったら中から楓音の声が聞こえてさ。ドアが開いてたから、中を覗いたら、カーテンの隙間から楓音ともう一人の姿が見えたんだよね」



その言葉に再び胸はドキリと嫌な鼓動を打つ。



視線は地面を泳ぎまくり、動揺を隠せない。



「楓音の隣の席の斎宮って、借り物競争の時の人だったんだね」


「……っ!」



強い衝撃が走ると共に、声にもならない声をあげる。



目を見張り、あわあわする私に、もう隠すことなど無意味だった。