翼が体育の授業中に来る事はあっても放課後に保健室に来る事は滅多になかった。

「あれ?まだ帰ってなかったの?」
「うん…ちぃ姉に聞きたいことあって」
「ん?何」

そう言うと翼は近くのベッドに腰掛けた。
「ちぃ姉さぁ、彼氏いるって言ったよね?」
「…そうね」
「俺と一緒に救急車で病院来てくれた日、覚えてる?」
「ええ」

「ちぃ姉の彼氏って瀬川先生だったんだね」
「…ええ、そうよ」

「俺、兄弟いないし、親父もいないじゃん。母さんは一人で俺を育ててくれて。だから先生のこと兄貴って言うか、身近な頼れる同性として憧れてたんだよね」
「うん」