あの日の晩、大輔からもう大丈夫だから心配するなと電話があった。
けれどその時、一つお願いがあると彼は言った。

「病院では、特に翼の前では他人のフリをして欲しい。あの日たまたま会った医者と付き添いの教師。それ以上でも以下でもない」

理由は教えてくれなかったけど、きっと公私混同しない為だろう。そう理解した。

「クラスのみんなも心配してるぞ」
「そっか。俺、救急車で来たんだろ?あんまり覚えてないんだけど…山岡先生が付いて来てくれたんだってね。ありがとう」

「ううん、私はなにも」
「でも学校中の噂になってたりする?」
「救急車が来たのは分かってもどこの誰が乗って行ったかなんて分かんないでしょ」
「…そうかな」