嫌いになれなくて、ごめん

「…うるせぇよ。怒ると怖いけど本当はすごく優しいし何に対しても真面目な人なんだぜ」
「そっか。ベタ惚れだな」
「俺の初恋…」

「大事にしろよ、初恋は。目が覚めたなら診察だけさせてくれ」
「…うん」
「頭痛や目眩がするとかはないか?」
「平気…。これも要らない」

翼は鼻の下に付けていた酸素のコードに手を伸ばした。

「ダメだ。呼吸が安定するまでは付けてろ」
「嫌いなんだよ、これ」
「医者の言うことは黙って聞け」
「…はぁ」
「もうすぐお母さんも来るだろ。しばらくは安静に、また見に来るから」
「…ありがと先生」