嫌いになれなくて、ごめん

「ったく…ここは診察室であって、恋愛相談所じゃないんだけど」
ボールペンをクルクル回しながら彼に向き合った。

「なぁ先生ならどうする?好きな人に好きな人がいたら?」
「でもまだ確定じゃないんだろ?」
「聞いたってはぐらかされたの!」
「お前が眼中にないからだろ?その人にとってお前は恋愛対象外。だったらまずは対象圏内に入る努力をしろ」

「例えば?」
「それを考えるのが恋愛の醍醐味だろ?教えられた事だけが正しいという保証もない」
「難しいこというねぇ…」
「ほら、分かったらもう帰れ。生憎、患者はお前だけじゃないからな」
「分かったよ。じゃあね先生」
「きちんと薬もらって帰れよ」
「分かってる」

高校2年生、青春を謳歌している彼の背中をそっと押してやりたい気持ちはあるけれど、素直に頑張れよと言ってやれないのが辛い。
翼の検査結果を見てため息をついてしまった。