嫌いになれなくて、ごめん

「先生。俺の勝ちだ…」
「…そうね。はい約束の品」

寝転ぶ彼のオデコの上にカフェオレを置いた。
10秒を切っても切らなくても渡すつもりだった。
「やった…」

黙って手を差し出すと、彼は掴まり起き上がった。
「どうだった?カッコ良かっただろ」
「そうね。久しぶりに貴方の全力疾走を見たけど昔と変わらずカッコ良かったんじゃない?」

「へへ。よしヒロ!帰ろうぜ。俺の健闘を讃えてチャリの後ろに乗せてくれ」
お尻についた土をパンパンと叩きながらそう言った。

「全く意味が分かんないけど、お前が勝ったならそれで良い。じゃ姉ちゃんお先」
「気をつけて帰るのよ」

じゃれあいながら帰る2人の背中を見送った。