実際、

私はお嬢様なんかじゃない。

一人っ子で、

両親が共働きで、

普通のマンションに住んでる。

だから、

人より少しばかり贅沢ができるだけ。


本当は、

人にこう説明すればいいのだけど、

なんかめんどくさいし、

やっぱり

『お嬢様に見られたい』

って気持ちがあるから、

あえて言わないの。

バカみたいだね。

外見だけ飾っても中身がともなわなきゃ、

意味がないのに。

でも、

私はそんなことに気づける余裕がない。

とりあえず、

視野が狭いの。

貧しい国がある

って分かってても、

自分には関係ないって思ってしまう。


この頃の私は本当に未熟だった。

何か厳しさを必要としていた。


私は

自分が甘ちゃんだ

ってことを

知らなかったんだ。


それを知り始めたのは、

この居酒屋のバイトをやり始めてからだった。




バイトは初体験だった。

何もかもが初めてだった。

高校を卒業したばかりの私は、

進学するわけでもなく、

就職するわけでもなく、

フリーターになるわけでもなく、

アルバイトをした。