不安そうな声の聖菜にいつも通り笑いかけた

はずなのに…。

あれ…?なんで視界が滲んでるの?

「ももちゃん、なんで泣いてるの…?」

聖菜に言われて、自分が泣いてることに気付

く。そして、クラスのキッチン担当のみんな

から視線を送られて。

どうしよう。このままじゃ迷惑かけちゃう。

「ご、ごめん!ちょっと目痛いから、目薬取

ってくるね。」

私は下手くそなごまかしだけを広い家庭科室

に残して出ていく。

廊下を走れば、すぐ涙も止まる。そう思って

いるのに、走るたびに想いが涙に代わって溢

れだす。

「白河?」

人気のない廊下まで来て、立ち止まっている

と、後ろから先生の声がした。

このままじゃ先生にまで心配かけちゃう…。

「甘酸っぱい匂いがするな~。」

楽しそうな先生の声につい振り返ってしま

う。

「なんですか、それ。」

振り返った先にいる先生はどこか懐かしそう

な笑みを浮かべていて、私も釣られるように

笑った。

「お、元気出たか?」

「え?」

「先生からは何も言わないけど、一ついいこ

と教えてやる。」

先生は一歩だけ私に近づいて、真剣な目で話

した。

「待ってるだけじゃ幸せにはなれないんだ。

白河が今悩んでるなら、思い切って飛び込ん

でみろ。」

いつも生徒にいじられてばかりの先生が、真

剣に向き合ってくれたのが嬉しくて。