「そろそろバイト決めなきゃ。」

私は、昼休みに聖菜とお弁当を食べながら、

バイトの求人を広げていた。

「ももちゃんバイトするの?」

「うん。私一人暮らしだからね。」

でも、高校生ができるバイトなんて限られて

いるから、見つけるのが大変なんだよね。

「ももちゃんがバイト始めたら、聖菜と一緒

に帰る日少なくなるね…。」

箸を咥えていじける聖菜。可愛すぎる…。

「でも聖菜には玲悟くんがいるから一人じゃ

ないよ?」

聖菜が玲悟くんの気持ちに気付くための作戦

の一つ。「聖菜を一人で帰らせない男気玲く

ん見せつけろ大作戦」

これで、玲悟くんが少し頑張ったら、二人の

恋は動き始めるのでは…。

「私が一緒に帰ってあげられないときは、玲

悟くんと二人で帰れる?」

「ももちゃんがいいけど、玲くんも好きだか

らいいよっ!」

いくら幼馴染で目の前に本人がいないとは言

え、異性をはっきり「好き」って言うなん

て…。これは勘違いしかしないよ。

玲悟くん、この子はなかなかの強敵だぞ。

その日の帰り、聖菜と別れてから、あの細

い路地に向かった。

この不思議な空気を纏うお店は、初めてこ

の道を通った日から、気になっていた。な

ぜか導かれるように、いつもここにたどり

着いてしまう。

「お客さん?」

路地を歩いて向かってくる男性。