オオカミ様VS王子様 ~私を賭けたラブゲーム~

「いつの間にか、大人になってたんだな。」

静かなリビングに響いたのは、震えるお父さ

んの声。

「黒宮くん。ももを…よろしくお願いしま

す…。」

お父さんは目に涙を溜めながら、蓮人に優し

く笑いかける。それじゃ…。

「はい。必ず守ります。」

「お父さん…。」

私が幼い頃、よく撫でてくれていた手が、頭

にぽんっと乗せられる。

「これからまた、ゆっくり見つけなさい。も

もの夢を。」

その言葉を残して、リビングを出ていった。

認めて…もらえた…。なんだか安心して体の

力が抜ける。これからも蓮人の隣を歩いてい

いんだ。

「おい。」

頭上から聞こえる声は蓮人のものじゃなく

て…。

「お兄ちゃん!」

私のことを呼んだのかと思ったけど、お兄ち

ゃんは思いっきり蓮人を睨んでいた。

「お前、もものこと泣かせるような真似した

ら…。」

「したら…?」

お兄ちゃんは蓮人に一歩近づいて。

「お前のこと、真っ二つにするからな。」

それだけを残して、リビングを出ていった。

相変わらずよくわかんないけど。

「蓮人。よかったね!」

「ま、真っ二つって…。」

苦笑いを浮かべる蓮人だけど、すぐにいつも

の笑顔で私に元気をくれる。

「ずっと蓮人の隣にいるね?」

「だから、そういうのはオレに先に言わせ

ろ。」

蓮人が力強く私を抱きしめるから、私も手放

すまいと蓮人の背中に腕を回した。