私も後を追ってお店に戻った。

私を心配そうに見る聖菜と玲悟くんに駆け寄

り、

「何もなかったって。」

と小声で言った。

二人は、曇りない笑顔になった。

「おい、蓮人。顔真っ赤だぞ。」

青田さんは、黒宮さんをからかっている。

ん?青田さん、今「蓮人」って…。

「青田さん、黒宮さんとお知り合いなんです

か?」

「ここの常連さん。で、今は親友。」

そうだったんだ。

それから、青田さんにも昨日のことを説明し

て、黒宮さんの容疑は晴れた。

帰り道、黒宮さんと二人になると。

「お前、面白い奴と友達なんだな。」

「不思議な子たちですよね。」

聖菜と玲悟くんの話をする黒宮さんもやっぱ

り、優しい目をしていた。

夜空に浮かぶ三日月が黒宮さんの目に映って

儚く見えた。

「何みてんの?」

わ、私、黒宮さんのことずっと見てたの?

恥ずかしい…。

「オレに惚れちゃった?」

顔を近づけてにやっとするから、体温が上昇

しちゃう。

「ち、違いますっ!」

確かにドキッとしたけど!

田舎から上京してきたんだから。

都会のイケメンには免疫がないだけ!

「もも。お前、面白いな。」

あ…。黒宮さんが笑ってくれた。

この人が寂しそうに見えるのは、なぜだろ

う。この日から波乱の恋が動きだしたこと

を、まだ誰も知らない。