「ももっ!」

一度止めた足を、ももに向けて進ませる。

「お前今まで何し…!!」

オレの言葉はそこで途切れた。

走る足を止めずにオレの胸に飛び込んできた

ももを受け止めて。

ももの細い腕がオレの背中に回り、オレの胸

に顔を埋めたまま。

「ごめんなさい…。」

震えた声から不安が伝わってくる。

もも…。ごめんな。

「本当にお前は、オレに心配かけるのが得意

なんだな。」

ももの体をぎゅっと抱きしめて、風になびく

髪を優しく撫でる。

「私、蓮人さんが綺麗な女の人といるの見

て、勝手にやきもち妬いてて…。」

女…?

オレはデートの日を振り返り、ふと思い出し

た。

まさか、ももと離れた一瞬に声をかけてきた

女のことか?

あの時オレは、知らない女に「モデルになら

ないか?」と声をかけられた。

もちろん断ったが、ももがあの瞬間を見て、

嫉妬してたなんて、気づかなかった。

「こんな嫌なところ知られたくなくて…。嫌

われるのが怖くて…。」

ももは何もわかってないな。

オレがももをどれだけ好きか。

背中に回った手がオレの服をぎゅっと握って

必死に気持ちを伝えてくれているももを、今

この瞬間も愛おしいと心が叫んでる。

「蓮人さんが大好きです。」

意を決したように顔をあげて、想いを伝えて

くれる。

真っ赤に染めた頬、潤んだ瞳。それを上目遣

いでオレを向けてくる。