「誰?」

ドアの方から男の声が聞こえてきた。

「お前、覚えてないの?」

「え?」

覚えてないって。

この人、もしかして最後に来た男の人?

「昨日の夜、お前のこと助けたんだけど。」

このお兄さんが言うには、助けてもらった

後、気を失ってしまったらしい。

「じゃあ、ここは…」

「オレんち。」

つまり。私はこの優しいお兄さんに助けても

らった挙句、気を失って一晩お世話になって

しまったと。

「ご迷惑をおかけしました。」

これは、失態です。

お兄さんは、温かいスープを持ってきてくれ

ていて「とりあえず飲んで落ち着いたら。」

と言ってくれた。

スプーンですくい、一口。

「おいしい。」

野菜もいっぱい入っていて、優しい味がし

た。

「お前、名前は?」

「白河ももです。お兄さんは…?」

「黒宮蓮人。」

黒宮さんか…。

「黒宮さん!昨日から今にかけて本当にあり

がとうございました!」

この人、見た目はクールだし、話し方も淡白

で冷たい印象だけど。

だけど、すごく寂しそうに見える。寂しさの

奥に優しさを感じる。

私を助けてくれたこと、見知らぬ女子高生を

自分の部屋で看病してくれたこと。

この人は絶対悪い人じゃない。

「私、学校行かなきゃ。」

時計の針は8時を指している。