「お待たせしましたっ!」

できるだけさっきまでと同じように返事をし

て、蓮人さんに駆け寄る。

「もうすぐペンギンショーが始まりますね!

行きましょっ!」

蓮人さんの手を引いて、ペンギンショーの会

場に急いだ。

空が茜色になるころ、家の近くまで来てい

た。

「今日は楽しかったです!」

「もも。」

突然真剣な声で名前を呼ばれて、心臓が飛び

跳ねる。

ただ、名前を呼んでもらえるだけで嬉しいの

に、蓮人さんが私以外の人に笑いかけるのは

嫌だなんて、我儘すぎる。

「お前、なんかあった?」

「なんでですか?」

お願い。気づかないで。

今の私の心を知られたら、嫌われる。

「今日、途中からお前の様子変なんだけ

ど。」

「そんなことないですよ!じゃ、おやすみな

さい!」

私の行きたい場所に連れて行ってくれて、私

の歩幅に合わせて歩いてくれて、私の手をず

っと握ってくれていた。

どこまでも優しい蓮人さんに、あんな態度と

っちゃうなんて…。自分がこんなに恋愛下手

で不器用だなんて知らなかった。

「蓮人さんに、嫌われちゃったかな…。」

蓮人さんからの連絡に、何も返せないまま、

3日が経ってしまった。