怖い…。

誰か…助けて…。

一人が私の左手首を掴んだ。

「離してください。」

涙が出そうなのを必死に堪える。

「涙目とかそそるわ」

「じゃあ一緒に遊ぼうか」

もうだめだ…。大人の男の人に力で敵うわけ

ない。

「オレも混ぜてよ。」

3人とは違う男の声が聞こえた。

何？怖いよ。

「誰お前。」

「みんなで遊ぶなら、人数が多い方が楽しい

と思って。」

悪い人…？

「お前、面白いじゃん。仲間に入れてやる

よ。」

こんな時に助けてくれる王子様は現実にはい

ないよね…。

「そりゃどーも。」

バン！

突然の大きな音に驚いて、目を開けると、男

が一人吹っ飛んでいた。と思ったら、あっと

いう間に3人とも地面に倒れていた。

「お前、大丈夫か？」

「あ、はい…。」

目の前には真っ黒のパーカーでフードを被っ

た背の高いお兄さんが立っていた。

「あの、ありがとうござ…」

そこで私の記憶は途切れてしまった。

気が付くと、見慣れない真っ白な天井が広が

っていた。ふかふかのベッド。ぶかぶかのＴ

シャツ。

え…。

全然記憶ないんだけど…。

悪い人たちに捕まって、もう一人男の人が増

えて…。

私、もしかして…。嫌な想像ばかりが頭の中

を支配して。

どうしよう…。何も思い出せない。

「起きたか？」