ふと店のカウンターに並ぶ小物の中に、写真たてに飾られた一枚の写真を見ると、そこには・・・オーナーであるシェフときれいな一人の日本人女性が年を取ったイタリア人のおばあさんとテーブルを囲んで笑っている。写真たての前には『イタリアの母が認めたラザニア』と書かれている。

メインシェフは厨房が落ち着くと厨房からなにか料理をカートにのせて出てきた。

それまでの客に向けていた笑顔とは比べ物にならないくらい優しい表情でどこかへむかっていく。
レストランの一角には小さな低いカーテンで仕切れるようになっているスペースがある。そこへ向かってシェフはその表情を崩すことなく向かって行く。


そこには写真にシェフと一緒に写っていた女性。
女性の座っている机の上には何やら仕事道具が散乱していて、シェフは少し厳しい表情をつくり女性を見つめると机の上の書類や本、パソコンを慣れた手つきで片付け始めた。

片づけが終わるとその机に運んだ食事を並べ始める。
料理を見ると女性はそれまでの表情とは全く違う笑顔になる。

心から気を許しているような笑顔でシェフを見つめる。