それでも、内定をもらうたびに複雑な表情を見せる奏介に紗那の心は痛んだ。

奏介にこんな顔をさせているのは、自分だと紗那はわかっていながらその背中をいつまでも押せなかった。

悩んで悩んで・・たくさんの時間をかけて考えた末、紗那はやっと奏介に別れを切り出した。

離れて頑張ってほしい。
そのためには距離を置くとか、遠距離恋愛なんてできないと決断して別れを切り出した紗那。

奏介はその時初めて紗那の前で涙を見せた。

それは悲しみの涙ではない。
紗那の言葉の裏にある紗那の気持ちを受け止めたからだ。
紗那の大きな愛と、全力のエールに感謝しながら、流した涙だった。

まだ夢をかなえたとは言えない。
でも、今度はちゃんと二人で歩みながら夢をつかむ道を歩みたい。

そう願いながら紗那はそっと奏介の体に抱きついた。