これでもかというくらい目を見開いて、
 固まっているお兄ちゃん。


「わかんないよ、私だって。

 七星くんに完全にフラれて、
 誰かに助けてもらいたいって思った時には、
 お兄ちゃんのところに向かっていたんだから」


 自分で言葉を口にした後に、
 恥ずかしくなった。


 だって
 『お兄ちゃんに会いたかった』なんて、
 ふつう思わないよね。妹が。
 

 それにちょっと前まで、
 お兄ちゃんなんて大嫌いだった。


 いつも私に文句ばっかり言って、
 ブスとか平気でけなしてきたから。


 それなのに、
 辛いときに一番に会いたいと思ったのが
 お兄ちゃんだったなんて。


 自分で自分のことがわからない。


 理解ができない。


 恥ずかしくなって、
 お兄ちゃんの顔がまともに見られないよ。


 その時お兄ちゃんが、
 落ち着きのある低い声で、私に言った。


「七星に、フラれたのか?」


 そうだ。 


 フラれたんだ。


 この恋が終わったんだ。


 私は、コクリとうなずいた。


「七星くん、
 クルミちゃんと付き合っているって
 知っていたのに、
 自分の思い、伝えちゃった。バカだよね?」


 お兄ちゃんに、
 『バカだな』って言ってほしい。


 お前はブスなんだから、
 恋なんかするなって言ってほしい。


 それなのにお兄ちゃんは、
 なぜか優しい瞳で私を見つめていた。


「七星くんへの長い片思いも、
 今日でちゃんと終わりにするから……
 だから……」


 お兄ちゃんに……

 助けて欲しい……