いつきさんの声を聞いたら堪えきれなくて
口からその言葉が突いて出た



『分かった』



『待ってて。すぐ帰るから』



返答に悩む間はなかった
間髪いれずにいつきさんはそう声を返して

電話は切れた




――……



しばらくして玄関のドアが開く



「ひなたちゃん」

「……いつきさん」

「ただいま」



顔を見たらほっとして

扉の前で座って待ってた私は立ち上がって
そっと、いつきさんの服の裾を掴む



「……おかえりなさい」

「うん。ただいま」



そんな私の頭を優しく撫でて
いつきさんは『いつものように』笑った



――……



「……ごめんなさい。わがまま言って」

「全然。むしろ嬉しかった」


あったかい飲み物を用意してくれたいつきさん
ソファーに腰掛ける私の前に
そのマグカップを置くと隣に座った


「俺を頼ってくれたこと
待っててくれたこと」

「…」


言葉通り嬉しそうに表情を崩すいつきさん
それでも申し訳なくて、私はうつ向く