「ひなた」

「あ、さゆ姉さん」

「あんた、今日はあたしの家泊まりね」

「へ?」


部屋の掃除をしてる最中、急に現れたのは
シュカさんに次いで2番人気のさゆ姉さん

唐突にそんなことを言ってくるものだから
私はきょとんとして
間の抜けた声を返してしまう


「それ。またあのくそ親父にやられたんでしょ」

「ああ。いつものことだよ」


まるでチークをつけたように
頬の真ん中に、丸く浮き出た
青紫色のあざを指差される

へらへら笑う私に
さゆ姉さんは苛立ったように舌打ちして

それから、がしっと私の頭を掴む


「あんたね。少しは怒るって事を覚えなさいよ」

「だって
さゆ姉さんが代わりに怒ってくれるから」

「…」


笑って返せば
ふっと、さゆ姉さんの手から力が抜ける


さゆ姉さんも小さな頃から
身内で苦労をしてきてる

私の立場を実際に経験してるからこそ
自分の事のように気にして
こんな風に怒ってくれる